治療スタイルの変遷

専門学校での話

※鍼灸師になった経緯等は「なぜ鍼灸師に?」をお読みください。

脱サラして晴れて行岡鍼灸専門学校に入学した後のお話です。

学校での生活は良い先生と仲間に恵まれ、とても楽しいものでした。
(因みに妻は鍼灸学校のクラスメイトです。)

しかし勉強上では問題が…

鍼灸を大きく分けると現代医学的な鍼灸と伝統医学的な鍼灸に分かります。
入学当初から漠然とですが、せっかくやるなら伝統鍼灸と決めていました。
現代医学的な授業は理解しやすかったのですが、伝統鍼灸の方は本を読めば読むほど、授業を聞けば聞くほど、理論も効果も信用できずに、逆に不信感ばかりが募っていきました。
(このままでは治療のしようがないので、現代医学的な鍼灸をボチボチと独習していました。)

この頃は鍼灸自体に失望し、この道に進んだことを後悔していました。

また鍼灸師でまともに喰えている人は数%だという現実を知り、将来への希望を失いつつありました。

経絡治療との出会い

そんな投げやりな思いで過ごしてる中、鍼灸学校のT先生が「経絡治療」(伝統鍼灸)という方法で素晴らしい治療成績を上げ、経営的にも成功していると聞きました。

最終学年の3年生という焦りもあり、ダメ元でT先生と同じ流派(井上系経絡治療)の勉強会に参加してみました。

今まで出会った伝統鍼灸のお偉方には、辟易していました。
こんな感じの怪しい先生が多かったので…

  • 見るからに胡散臭い人(浮世離れした仙人タイプ)
  • 理論無視のオカルト路線
  • 「気を感じろ!」的な特殊能力?を要求する先生
  • 若い鍼灸師を洗脳していく教祖様タイプ

予想に反して、代表のS先生は理知的で都会的な先生でした。

失礼ながら、この先生は怪しくないぞ!大丈夫!と安心しました。

S先生に教えていただいた井上系経絡治療には、感覚や経験に頼ることがない、きっちりとした診断から治療までのシステムがあり、とても魅力を感じました。

これなら自分にも出来そうだ!と諦めかけていた鍼灸の道に希望が持てるようになりました。

それから、月2回のペースで経絡治療の研究会に参加して、理論と実技を学び、古典文献の読解の指導を受け、日本鍼灸史学会日本医史学会で発表もさせていただきました。

治療スタイルに変化が

早くも開業

治療法で彷徨っていた丸腰の鍼灸学生が、いきなり経絡治療という武器を得ました。
武器を持つとドンドン実戦(治療)に使いたくなってくるものです。
(たとえがマズいですが…)

しかし、業界の問題なのですが、鍼を打たしてもらえる就職先がほとんどないのです。
ならば開業しかありません。

無謀にも卒業と同時に往診専門で開業し、その翌年には現在の若林鍼灸院を開院させました。
(初めのうちは、学生のことから働かせていただいた治療院でのバイトと掛け持ちでした…)

以降は経絡治療専門で治療を行ってきました。

ある患者さんとの出会いで

数年前、ある患者さんが来院されました。

右の太ももに力が入りにくく、膝の屈伸ができない患者でした。
 
周辺のあらゆる鍼灸院を回ったそうですが、治らずにお困りのようでした。

現代医学的な考え方をする先生は「腰が悪い」と言って腰とお尻の治療したようです。
中医学的な弁証治療や経絡治療的な鍼灸師は、患部の右の大腿部とは離れた場所のツボを使って治療したようでした。

患者さんは「私が悪いのは右の太ももなんです。そこに誰も刺してくれない。太ももに刺して!」と局所治療を懇願されました。

私も経絡治療派なので、脈を診て、手足の末端に鍼をするのが治療のメインで、局所治療はお断りしたのですが、勢いに負けてしまいました。

「じゃぁ、せっかく来院されたことだし、仰っている右の太ももに集中的に鍼を打ちましょう。ただし今回だけですよ!」と約束しました。

大腿部を丁寧に触診してみました。
すると圧迫するとひどく痛む部分と硬いしこりを発見しました。

半ば焼けクソ気味に、触診で見付けたポイントと、太ももの筋肉に十数本の鍼をしました。
(写真はそのイメージ画像です)

画像の説明

しっかりと刺すように

予想外の効果

その患者さんの太ももから鍼を抜き、膝を屈伸していていただきました。

すると、スムーズに屈伸できていると患者さんは大喜び。

私は根が単純でバカなのでしょうね。
患者さんに喜ばれると嬉しくなって、次回もその患者さんの太ももの筋肉にしっかりと鍼をしました。

それから数回通っていただいているうちに完治されました。

「めでたし。めでたし。」とホッとしていましたが…

もうどうにも止まらない♪

その患者様は社交的な方で、他の患者さんを紹介してくれました。

「あそこの先生は、しっかりと鍼をしてくれるで!」と…

まずい!あの人だけ特別にやったことなのに!と思ったけど、時既に遅し。

紹介で来られた患者さんには、従来の経絡治療だけでなく、解剖学の本を参考にしながら、問題のある筋肉にしっかり鍼をするようにしました。

意に反してやった鍼ですが、経絡治療だけを行っていた時よりも、早い回数で回復するようになりました。
(凝り固まった筋肉に鍼を刺して緩めるというシンプルな方法なのにもかかわらず…)

経絡治療でも短期間で良くなることもありますが、本来は長い回数をかけて、ゆっくりと回復させる手法です。
イラチな(せっかちな)大阪人気質の患者さんや経済的に余裕の無い患者さんが治療途中で離脱してしまうこともありました。
脱サラした人間で根っからの商売人でない私は、次の予約を取り付けるのも苦痛ですし、長期間、患者さんをつなぎ留めておくことが嫌で嫌で仕方ありませんでした。

とにかく1回でも早く治す方法に飢えていました。

だから、もっと正確に筋肉に鍼を打ち、更に深い筋肉にもアプローチしたら、もっと早く治せるようになるのはないかと考え始めました。

北京堂方式を導入

そこで大腰筋刺鍼などの深鍼や鍼数の多い鍼を行い、高い治療成績を上げていることで有名な北京堂式の鍼灸を学んでみたいと思うようになりました。
そんな経緯で北京堂鍼灸代表の淺野周先生の一番弟子でいらっしゃる二天堂鍼灸院の中野保先生のご指導を仰ぐことになりました。

ただ痛いところや辛い箇所にポツポツと刺す中途半端な鍼ならば、伝統鍼灸派に揶揄されるような「痛いとこ鍼」や「慰安鍼」なのでしょう。
しかし問題になっている筋肉を浅い層も深い層も、徹底的に緩めてあげる手法は、完治にもつながる有効な治療法だと確信しました。

そんなこんなで、従来の陰陽五行に基づく伝統医学的な視点に加え、筋肉や神経に着目した現代医学的な視点の鍼灸の2本立てで臨床を行うことになりました。

今後の展開

私が学生から8年間お世話になった研究会の先生方は、経絡治療だけで臨床を行い、高いレベルで鍼灸の古典文献を研究されている方々です。
私自身が経絡治療一本で臨床を行わなくなったので、一つのケジメとして平成27年に退会することにしました。

無所属で完全に自由な立場になりました。

自分で勉強する足がかりは既に得たので、あとは深化させていくだけです。

鍼で患者さんを元気にする為に、中国医学と現代医学を行き来しながら、最適な治療法を提供してまいります。

治療スタイルも確立されて、治療家という仕事にもやりがいを感じてきました(遅っ!)

脱サラして良かったと思える今日この頃。

東洋と西洋、硬と軟、剛と柔を自在に使いこなす治療家へ向けて日々精進。

ますます深化&進化する若林鍼灸院に乞うご期待 [smile]

その後

今までマッサージ師の国家資格を持っているのに、鍼灸師にありがちな変なプライドが邪魔して、マッサージや指圧は自ら封印していました。

持てる資格やスキルを無駄にするのは勿体ないと思い始め、平成27年4月から手技療法の勉強を再開しました。
(そのうちマッサージなどの新しい治療メニューを導入するかもしれません。)

鍼の方も新しい先生に師事して、技術も日々進化中です。